技術ブログ/8 静止土圧係数の推定法について
- BORAM Co.,Ltd.

- 9月2日
- 読了時間: 2分
地盤工学において頻繁に表れるキーワードとして「土圧」があげられます。擁壁、土留め工や地すべり抑止工などの抗土圧構造物や、トンネルやボックスカルバートなどの地下構造物の設計・施工において、土圧は重要な検討項目となります。一口に土圧と言っても、対象とする構造物の種類や作用外力に応じて主働/受働/地震時土圧や、ゆるみ土圧、膨張性土圧、側方流動土圧、偏土圧、泥土圧など、さまざまなタイプのものがあります。
ところで筆者にとって、とくに実務設計計算において度々使用されているものの、何となくつかみどころのない土圧が「静止土圧」です。水平土圧σhと鉛直土圧σvの比で表される静止土圧係数K0=σh/σvの推定式については、これまでに数多く提案されてきました。一例として以下があげられます。

Ipとφ’あるいはN値には相関関係があると言われているので、上の式はいずれも土の強度パラメータがK0を規定していると考えてよいと思います。一方、弾性論では地盤の強度とは対照的に、変形パラメータであるポアソン比νを用いて下式が得られます。

これら力学的意味の異なる2つのパラメータ(φ、ν)が適用されている点が、「何となくつかみどころのない」静止土圧係数K0に繋がっているのかもしれません。この点、非圧縮性流体の水はν=0.5としてあらゆる方向に常にK0=1となり至極明快なのに対し、土の場合はポアソン比をν=0.3~0.5と仮定してK0≒0.4~1.0となり大きな範囲を有しています。
過圧密(膨張時)の静止土圧係数K0cはさらに手ごわく、過圧密比をOCRとして以下が提案されています1)。

ボックスカルバートやU形擁壁の側壁設計に用いられる静止土圧係数K0としては、裏込め土の種類に応じて前述したような0.4~1.0程度が用いられる場合がありますが、裏込め背面施工時の締固め状況によっては過圧密状態となり、理論的な静止土圧係数K0cを求めることは難題となります。
地震時における設計用静止土圧係数の算定ともなると、理論値を得ることはさらに複雑になりそうです。綿密な検討を行うためには、応答変位法や静的・動的FEM解析など、地盤と構造物の相互作用と応力履歴を考慮した解析を実施することが必要になると考えられます。
参考文献
1) Mayne, P. W., Kulhawy, F. H. (1982) : K0-OCR Relationships in Soil, Journal of the Geotechnical Engineering Division, ASCE, Vol.108, pp851-872




